日々の雑感〜20世紀最後の徒花フロッピーディスク規格「HiFD」〜

昨年末、コロナ禍にあって久しぶりに顔を合わせた旧知との談笑のなかで「HiFD」がお題に上がりました。「HiFD」は、1997年に発表され2000年に製品発表された一般的には全く知られていない”最後のフロッピーディスク規格製品”。

前世紀「丸い磁気記録」のエンジニアをやってた者にとっては興味深いシロモノではありましたが、2000年には既に書換可能なCD-RWや更に信頼性も高い230MBの3.5インチMO(光磁気ディスク)が価格的にもこなれて、DTPやマルチメディアを扱うコンシューマー向け記録メディアとして認知された頃で...HiFDは「いったい何で今頃」なシロモノでした。

富士写真フィルムとソニー共同開発という処が興味深いのですが...

記憶容量 両面200MB(フォーマット時)
両面240MB(未フォーマット時)
ディスク直径 86mm
シェル外形寸法 94mm×90mm×3.3mm(3.5型)
トラックピッチ 9μm
トラック密度 2,822tpi(111tpmm)
線記録密度 72―91kbpi(2.83-3.58kbpmm)
変調/復調方式 PRML(16-17code)
転送速度 最大3.6MB/sec

 

「HiFD」に至る記録媒体としての源流は、1988年に電子スチルカメラ規格mavica(magnetic video camera)用にソニーが製品化したメタル磁性体による高密度記録、高速転送のアナログ記録媒体「2インチビデオフロッピー」ですが、そこにデジタル記録やトライボロジカルな対応として1992年に富士写真フィルムが開発したメタル磁性体による塗布型薄膜メタル媒体(ATOM:Advanced Super Thin Layer & High Output Metal Media)と合流しての開発が行われたと思われます。

MF2TD・MF2SD規格のメタルフロッピー開発をやってた1994年頃、電磁変換特性を優先した1μm以下の薄膜塗布ではメタル磁性層の表層潤滑、耐クラッシュ、耐スティック特性が著しく劣ってしまい、対策として下層に酸化チタン・カーボン潤滑層を設ける試みとかやってましたが、ハードウェアの方がどんどん超精密メカニカル化して既に安価な記録方式とは無縁な世界になり、理屈どおりの性能を要求するには「フロッピーディスク」はすでに貧弱過ぎるシステムだと感じておりました。

ネットで情報を探すと転がってるモンですね。現場もたいへんだったろうなぁ....

皮肉にも初製品出荷として富士写真フィルムさん向けにMF2DDを納品した際のジブンの現場状況と酷似しております...「HiFD」は、冷静な時代の判断なく技術にしがみつこうとした結果に見えますが、技術にしがみついて花開くモノもちゃんとあります。

バリウムフェライト磁性体を用いた大容量データテープ
http://and-fujifilm.jp/bafe/

TV-CMでもおなじみの富士フィルムの「バリウムフェライト磁性体を用いた大容量データテープ〜手のひらに収まるテープ一巻に250TB」は、簡素化されたハードウェアと安定な素材が信頼性を担保しているビッグデータを扱う現代に欠かせないデータバックアップシステムと言えます。