三菱エクリプスクロス・ディーゼルターボはこんなクルマです

我が家にエクリプスクロス・クリーンディーゼルがやってきたものの、長梅雨、新型コロナ規制のため夏季休暇中もまだそれほど遠出は出来ておりませんが、近場のお出かけ走行1500kmでの実感レビューです。

我が家がクリーンディーゼルを選択した理由

購入にあたってイチバン参考にさせてもらったのは意外や「トヨタ自動車のクルマ情報サイト:GAZOO.com」サイトのインプレッション記事です。

幾多のレビュー記事にあって複数の方の繰り返しインプレッションはそれなりにクルマの走りをイメージしやすかったです。

世界的な潮流はEVシフトで「なにをいまさらディーゼルエンジン」な時代のように言われておりますが、世間で言われているほどPHVもEVも必ずしも環境に優しくは無いし、単純に燃費が良いだけで割高なクルマを買って損得考えるのも馬鹿らしいし、まだまだIT-AIとのマッチング進化も著しいEVの本命は5年後な気がしております。

社会貢献でEVやPHVを選択するほど我が家はお人好しではありません。ガソリンエンジンほどぶん回さずとも十二分な走行が可能なディーゼル・ATの組み合わせは、精神的にも余裕が生まれると言うもんです。なにより走行距離が長目の我が家には軽油(ディーゼル)はガソリンの3割安だし...損得考えないワケはありません、

分厚いトルクを軽快なハンドリングで裁くクルマ

デリカD5とほぼ同仕様の2.2Lディーゼルターボエンジンにアイシン製クロスレシオな8速ATの組み合わせ、200kg以上軽い車体なのでパワー不足には無縁で、常にハイギアを選択する変速設定らしくほとんどの場面でエンジン回転数は1500プラスα、高速道路に乗らない限り一般路の法定速度ではパドルシフトで7速以上を選択することすら出来ません。
※高速道路で110km/h巡航時、8速・1500rpmでした。

マツダCX-5に搭載されるSKYACTIVE-Dに対して見劣りするスペックとも言われていますが、実際のトコロ十二分なトルクでクルマを押し出してくれてるので数値にこだわる意味は全く無いです。わざわざ45度登坂に耐えるエンジン構造にしてしまう、良くも悪くも”三菱重工”を連想してしまうエンジンという気がします。

車両重量がガソリンモデルより130kgほど重いクリーンディーゼル搭載車です。かなり重いエンジンを載せたフロントヘビーな重量配分になってるだろうことはカタログ読むだけで解っておりましたから、ドライブではさぞやプッシュアンダーなクルマかと想像しておりましたらビックリ、ニュートラルによく曲がります。地味にS-AWCマジック炸裂な感じです。

電動アシスト付きの小振りなステアリングに、Rock-to-Rock2.9回転とクイックな切れ味設定、そこにどちらかというと”鈍い”レスポンスな大径18インチホイールという組み合わせで、小回りが効くとは言い難い最小半径は5.4mです。そこに分厚いトルクのエンジンですから、小型車とも大型車とも違うドライブフィールに少しとまどいます。中立位置でのステアレスポンスはちょっと不足気味に感じますが、まぁ慣れていくんでしょうな...

「クーペ・スタイル」な小気味よさを推すクルマのキャラクターとしては、1.5Lガソリンターボエンジンの方が似合っているとも感じますが、我が家のドライブには凡庸なディーゼルが合ってる気がします。

 

乗り心地は ”硬派なオフローダー”

”乗り心地”というのとは違うのですが、全高1680mmと意外に高めな設定で、サイドシルの幅を狭くしてあるので乗り降りがすごく楽です。特に身長154cmのウチのつれあいが毎日運転するので非常に助かっています。さらに室内高も1240mmと高いのでカングーからの乗り換えでも圧迫を最小限に抑えられています。頭をぶつけないようにとか、足元を気にしないでよかったりとかなにげに毎回のことなので地味にですがたいへんありがたいです。

シートの見てくれにこだわりはありませんが、長距離巡航に耐えられるシロモノかどうか少し心配しておりました。連続300km走行で感じた実感としてはなんとか合格点をあげてもいいかな、くらいの出来です。アウトランダーに比べると背面・座面ともやや薄く感じられるきらいはありますが、レカロ風にサイドサポートがそこそこ効いたスポーツシートなのだからこんなモン、と割り切れるくらい。
ちなみにウチのつれあいは、マツダ流のドラポジ合わせだと怖くて運転出来ないらしく、CX-5だとつれあいの気に入ったドラポジが取れません。しかしながらエクリプスクロスだとさして問題なくドラポジを決められるらしい...不思議です。

水平基調ダッシュボード

他社SUVのダッシュボードは段々構成で高くなりがちですが、エクリプスクロスの助手席側インストルメントパネルは手前側にナローに下がった構成で、開放感ある見晴らしを生んでくれてて好印象。アルミ地のアクセントは上品とは言えませんが、ギンギラギンのメッキよりはマシかと... 変に凝って湾曲デザインされたダッシュボードよりも運転席側からの眺めも落ち着きます。(評論家さんによれば保守的・古典的なデザインなんだそうですが...)

水野和敏 氏曰く「今流のクルマではないです」

けっこう底意地悪い評論とも言えますが「そうかもしれない」と思えるトコロもあれば「このヒトの好みではないのね」と聞き流せる部分もあったりします。水野コメント「フルスロットルでグーーーと来るところが無い!」も嘘ではなくて、三菱のディーゼルは頭打ち早い回らないエンジンですけど8速ATが積極的にハイギア選択してくれるので実用上問題なく快適だし、トルク数値以上に力強く軽快に走ってくれます。たぶん水野さんは ディーゼルでも 90年代のV6ガソリン日産テラノ風なシティーSUVに回る、とでも言いたかったのかなぁ...と思えば溜飲下がるというもんですが、車体が”古典的な設計”イコール”操安性が劣る”と言うわけではありません。(下記参照)

静粛性についてはやはりマツダ ディーゼルに軍配が上がろうというのが世間相場。
ただ、鼓膜を張り直したウチのつれあいの特殊な耳には何故かマツダのディーゼルの方が不快な連続音を発しているように聞こえるらしいです。さらにクルマとしての騒音レベルで言うと評論家の中には「静か」だと評価するヒトもいれば「ガラガラ音は否めない」と不快に感ずるヒトもいたりします。此の辺はセルシオ以後に普段どんなクルマと付き合っているかという基準がバラバラなのでなんとも言えませんが、カングーと13年間つきあった我が家には「静寂」そのものだったりします。走行中は相応の遮音性が効いてるのか、ハイギアな変速アシストにも助けられてディーゼルエンジン音に悩まされることもなく、むやみに回転数をぶち上げるような変速・アクセルワークを選択しない限り概ね快適です。

「古典的な車体設計」でも最新ボディーに勝る安全性と操安性

一部の評論家さんは「ロールが大きい」みたいなことを書いておられますが、S-AWCが効いてるのかそういうジオメトリ設定なのか、舗装路をフツーに飛ばすくらいではカングーのときとは対照的にほとんどロールを感じないで曲がるクルマです。感覚的に不快に感じるほどではないですがリズムが刻めない風ではあります。足回りが特に硬いとは思えないのですが、段差ではラダーフレームの様な揺れ方をします。もう少し追従性の良い柔らかめの脚と組み合わせてもいいのに...とは感じます。ちゃんとオフロードに踏み込める4WD車を購入するからにはそれなりのボディーを持ったクルマであって欲しいと思っていたので、この辺は妥協な感じです。

やたらと「プラットフォームが古いからねぇ」という評論が目に付きますが、確かに古いんです。ただ、だから何が悪いのか具体的に触れた記述はなくて、ただ文句をつけたいだけなんだろうなぁ、としか思えません。

以下、三菱資料から引用...

エクリプスクロスではアウトランダーやRVRと共通のGSプラットフォーム(2000年代初頭にMMSとDaimler - Chrysler Groupによって開発)の最新版RISEフレームを投入、さらにエクリプスクロスのボディ構造ではアウトランダー比較で高強度鋼が 55%増え、パネルの多くに構造用接着剤による接着ジョイント(JFEトポロジー最適化技術)を追加、補強しました。


アウトランダー「Sエディション」で初採用した構造用接着剤の塗布面積を1.5倍に拡大。リヤまわりを中心にドア開口部にまで採用しより強固なボディを構築しています。

フロント各部のボディ剛性を構造面で向上する策として、カウルトップやスプリングハウスを強化するガセット、ブレース、3点留めのタワーバーを装着

剛性に寄与しているかどうかは分かりませんが、ルーフ形状を工夫したり、ルーフ内に樹脂充填したりとユーザーの目に触れない部分になにかと高剛性にこだわったボディーです。

「アウトランダーのボディーが剛性不足」なんて話は聞いたことがないし、なんでそこまでガチガチなボディーに仕立てなきゃならんのかはオフローダーを前提にしてるからと思えるし、大きくたわんだ落差路の乗り越えでもボディーのねじれは感じられず”ミシ”とも言いません。45度登坂や凸凹2点支持階段昇降走行に耐えるボディーと足回りで出来たクルマは、最近のSUVで言うところの”ラグジュアリーなシティーランナバウト”には無縁な乗り心地で、まさに”オフロードな三菱味”なのかもしれません。ちょっとハードな味付けに感じられる部分は今風ではないのかも...

ただ”古いボディー設計”と揶揄されても2018 衝突安全性能評価試験ではその優秀さが証明されております。ちなみに第一位:トヨタ・クラウン、第二位:スバル・フォレスターでした。

あるメーカーさんの設計屋さん曰く、マイナーチェンジでステアリングラックの建付けを良くしただけなのに”ボディー剛性上がってるねぇ”とかトンチンカンなこと言う評論家さんは多いらしく、流行語のようにやたらと「ボディー剛性が」とかいう奴は実は全然解っていないと笑っております。当然、ジブンも解っていないただのシロウトです。念の為。
 

km77.com 緊急回避/高速スラローム走行評価

少し激しめの試験走行で有名? なスペインの自動車評価サイト km77,com で、三菱エクリプスクロス、マツダCX-30、cx-5等の走行試験が掲載されているので紹介しておきます。エクリプスクロスは、ガソリンFF車の方のテストなのでフロントヘビーな我が家の4WD-GK9W(ディーゼル)では同じようにはいかないでしょうが、車体素性の良さは感じられます。
※緊急回避/高速スラローム時の破綻(コースアウト)上限速度から車体のスタビリティーを比較しています。どうやらサイト名の”km77”は「破綻上限速度:77km/h」を基準に複数人のドライバーの運転により評価しているようです。

マツダCX-3:破綻上限速度 75km/h <

マツダCX-5:破綻上限速度 77km/h

三菱エクリプスクロス:破綻上限速度 80km/h

日産X-trail e-power:破綻上限速度 74km/h

緊急回避/高速スラローム性能がイコール車体性能とは想いませんが、スポーツカー:トヨタGR86でさえ破綻上限速度 82km/hですから三菱エクリプスクロスのスタビリティーはかなり高いと言えます。なにより急ハンドル・ハードブレーキな緊急回避操作時での安定挙動は、ドライバー操作と車両挙動をセンサー検知し 4輪ブレーキ制御によって左右輪間の駆動/制動力配分をコントロールする「S-AWC」効果の妙と思えます。

逆に緊急回避/高速スラロームで酷い結果なSUVとしては....

トヨタ RAV4:破綻上限速度 71km/h

スバル XV:破綻上限速度 73km/h

腰高SUVなRAV4では切り返しの”お釣り”が大きめなのはなんとなくわかるんですが、クルマ批評家大絶賛なスポーツSUVを標榜するスバル XVが結構容易に破綻するとは... 緊急回避状況でのクルマのスタビリティーはイコール安全マージンですから上記2車種の結果はなんとも....です。

評論家がウンヌン言ってるのは詰まるところ”好み”を語っているに過ぎないのだと分かります...たぶん。

 

ASEANで販売している「三菱エクスパンダークロス」ほどのストロークを持つ足回りが与えられれば乗り心地も改善されるのやもしれませんが、今度は売り物とも言えるクイックなハンドリングとは両立しなくなるのでしょうねぇ...

ホントは「e_EVO_Concept」みたいなクルマと「三菱エクスパンダークロス」をラインナップしたかったんじゃなかろうか、財政的に1台にまとめるとしたら「エクリプスクロス」になりました、みたいに単純ではないながらもいろんな要素を詰め込んだらこんなん出来ました、みたいな性格が見え隠れする「エクリプスクロス」です。PHEVが搭載されるとさらにそんな性格が補完されそうですが、ガチガチの高剛性ボディーならEVOモデルも可能か?

 

三菱スキッパー以来の2段ウィンドウで後方視界良好

 

特徴的なリアビューを形作っている2段リア・ウィンドウ、「プリウスみたい」とも言われますが、ジブンは「三菱ミニカ・スキッパーみたい」だと思いました。

今回はキャッチに「こしゃくにも...クーペです」と遊べる余裕はなかったんですね...

車内からの後方視認性は思いの外良好です。

と言ってもカングーほど後方視界が開けているはずもなく、Cピラーに隠れた車の追い越しにヒヤッとする場面もありました。つれあい曰く「ドアミラーの注意点灯してた!」と怒られました。なるほど電波式レーダーが死角になりやすい斜め後方・隣レーン後方からの接近車両を検知して知らせてくれるのですね。必要です...

エクリプス クロスは、「サポカーSワイド」対象車です。

安全運転をサポートする先進技術を搭載したセーフティ・サポートカーS ワイド(サポカーSワイド)なクルマで、レーザーレーダーとカメラ、電波式レーダーがクルマの全方位を監視しております。高齢運転者を含めたすべてのドライバーによる交通事故の発生防止・被害軽減対策の一環...まぁそんなモンが必要な歳になりましたモン。

セーフティ・サポートには便利に助けられておりますが...前走者がホンダN-BOXだったりすると停車時に2m以内だとソナー警告音が鳴りまくったりします。どうやら干渉してるみたいですが、市場占有率が高いホンダN-BOXでしかもソナー装着率が高いのか出かけるたびに必ず数回ソナー警告音を聞くことになります。

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なんだかやっぱり中身は、三菱の「本格オフロードSUV仕立て」で薄味のランエボスパイスが地味に効いてるクルマです。「上質な」とかとは一線を画す乗り味は一般ウケしないやもしれませんねぇ...なにしろ正体がオフローダーなんだから。