モラルを頼りにした制度の崩壊〜オトナ版子供手当ではない生活保護制度

タレント河本準一のいわゆる「生活保護費受給問題」を契機に連日、関連ニュースが騒がしいですが、今度はキングコング梶原にも波及。「貧乏は恥ずかしくない」「貰わにゃ損」「役所が認めたんだから自分は悪くない」が肥大したらこうなりました感いっぱい。いちばんロクデナシだと感じたのは、タレントや吉本興業が堂々「法的に何の問題も無い」とコメントしていること。

資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。

 

もともと生活保護自体がモラルを頼りにした制度であって「セーフティーネット」とは言い難く現代にはフィットしないシロモノ。線引きが難しい生活保護受給基準を福祉課の認定責任にしわ寄せするなら「制度の見直し、厳格な運用」などと言い出す政治家も出てきます。緊急度の高い困窮者に影響が大きいのはもちろん、これだけ核家族化が進んでいる実態に「3親等内での扶養義務」は現実的とは言えないし、最低限度の生活とはなんぞやを国は示していないし、扶養義務を負う側の経済的余裕の勘定基準はないし、等々の問題抜きには進めません。当面はあからさまな「不正受給」摘発検挙を権限・行使できる状況を整備することくらいなのでしょう。

キングコング梶原の件について言えば「貰わにゃ損」ありきなフトドキモノ以外の何者でもない。おまけに評論家の情緒的な後押しなどナンセンス。

「3親等内での扶養義務」が規定されていても、現実には福祉事務所は援助を強制することもできないので、高収入の親族がいても、断られれば生活保護は受給できるというのが現状。親族名義のマンションに受給者が住んでいるケースについて厚労省は「マンションは受給者本人のものではないので直接法には触れない」とお役所のコメントを返すのみ。言うなれば生活保護はモラルがバックボーンでしっかりしていなければ成立しません。

こんなことでまた「ルール」や「基準」が増える...残念なハナシです。