新型(3.5インチ)MF2HDの実力

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株式会社コロムビアマグネプロダクツで製造されるフロッピーディスクの一部は、日本コロムビア株式会社の「DENON」ブランドとして国内市場に投入されていましたが、98%以上の大半は海外のアッセンブリメーカーへFD媒体のみを100枚単位でケース梱包した状態(「クッキー」と呼ばれる)でOEM輸出されました。

「DENON」ブランドとして国内販売はしていたもののパソコンに無縁な日本コロムビアの営業力を期待しても詮ない話で、国内シェア2%そこそこでは無いも同じ、どんなに原価計算したところで赤字の垂れ流し、工場サイドでは「名刺代わり」と割り切っていたものの、それなりに日本コロムビアとしての「営業成績」も残す必要があり、いろいろチャレンジングな製品も企画させてもらいました。

MF2HD Macintoshフォーマット済み製品
チキチキバンバン猛レース・キャラクタデザイン
キャラクタ・デスクトップアイコン付き
デスクトップ・デザイン導入

 

OEM戦争

1989年には本格的な出荷が始まり、帝人、日立マクセル、富士フイルム、TDK等のメーカーとの出荷競争となり、富士フイルム、TDKは早々にOEM戦線から脱落、1990年以降とりわけ東南アジア園への輸出では帝人との一騎打ちの様相となっていました。

富士フイルム、TDKが離脱した主な理由は、アッセンブリ前に行うFD媒体表面のバーニッシュ(研磨)工程での取扱いにおいて、2社製品はとりわけ気難しい媒体だったことがあげられます。海外OEM工場の設備は千差万別であるため、シビアな取扱いを要求するFD媒体は敬遠されたのです(短絡的に言うなら乱暴な研磨条件でも製品品質と性能が出なければ受け入れられなかった)

1992年以降は<連続分散方式>の新規生産プラントが立ち上がり、競争力を増した新型MF2HD(3.5インチ)クッキーの海外出荷数量は飛躍的に上昇しました。

海外工場へのプレゼンテーションに使用したのが下記のグラフです。
原液設備開発、原液配合改良とともに製造工程メインテナンスを充実させた結果、塗装時や加工時の事故に起因する塗膜欠陥を排除し、MPレベルは大幅に改善され、唯一他社レベルに劣ると言われ続けたEPレベルにおいても、同等以上のレベルに達していました。そしてOEM顧客先で直接競合となる帝人製媒体に対してもアドバンテージある品質を獲得できました。

 

<モデルチェンジ前後での当社比較>

<新型MF2HDの他社比較:MPレベル>

 

<新型MF2HDの他社比較:EPレベル>

 

<新型MF2HDの研磨時間と表面光沢度/2F出力>

「研磨テープよりも硬い」と評された8インチFD並みとはいきませんでしたが、MF2ED(4MB)開発で評価されたR410カーボンを追加添加することにより、耐研磨(バーニッシュ)性が向上し、OEM先組立工場での表面加工の強弱によらず安定した(2F)高出力を得られるようになりました。もともと耐スティッキング対策用に添加したR410カーボンですが、高湿度下でのヘッド摺動を安定化させるなど副産物も多かったのです。

model :DFMHXD    
1 MAGNETIC POWDER 20 XD8219
2 ADDITIVES 0.3 DDP−2
3 ADDITIVES 3.0 U−4
4 ADDITIVES 1.0 R410
5 ADDITIVES 0.98 K.B
6      
7 BINDER 4.0 MR110
8 BINDER 8.6 MAU−5022
9 ADDITIVES 4.0 #2
10 ADDITIVES 0.5 YT−101
11 ADDITIVES 0.03 AL−M
12 ADDITIVES 0.4 TDS
13 ADDITIVES 0.2 BES
      1992.4.24 MTG-9665

 

2011年放映のTBSドラマ『下町ロケット』第1作・第5話、ロケット燃料調圧バルブ採用の品質試験で原因不明のトラブルが発生、徹夜の突貫で原因追求し遂に原因を突き止める…というくだりがあるのですが、原因も含めて似たような経験を思い出しておりました。

1993年当時のMF2HDクッキー最大の出荷先だった中国・珠海のフロッピーディスク組立工場の品質試験において完成品歩留まりが50%程度と、クッキー出荷前検査(95%)に遥かに及ばないと指摘を受け、問題解決のため1ヶ月程程出張したことがあります。連日組立工場のシステムチェックをしても歩留まりを低下させる原因が掴めず、そろそろ中華料理を体が受け付けなくなってきた頃、メディアを磨く工程を経た品物の表面に微細な点々を発見、そこからは直感※でしたが、研磨工程の動作に使うエアーに水分が混入(圧縮時に飽和水蒸気量を超えた)したと推測、コンプレッサー後に水分除去用フィルターを追加してドライエアーを確保するよう改修、完成品歩留まりを80%台後半まで改善させ客先に供給製品品質を証明できました。

※日立研究所出向時、超々高解像度電子顕微鏡に使う複数台の真空ポンプとドライエアー対策に妙に感心した記憶が残っており、直感的に微細な点々=”水滴”と推測しました。

2012.1追記

 

1990年〜メディア開発に一区切り出来た頃、フロッピーディスク技術開発・設計部門と工場管理部門間で効率的な情報共有が出来るようにと、仕様書、指図書等をMacintosh/HyperCardスタックでデータベース化し、昔々に使われて放置されいた工場の内線電話ケーブルを使ってLANネットワークを構築してみました。

結果的には、青焼き書面に判子を貰いに駆け回る昔ながらのやり方が改まることもなく、製品管理も山のような伝票を掻き分け手作業でこなすのが変わることはありませんでした。

まだ世間にLANなど普及していない時代、まだパソコンを使ってくれない世代相手にいろいろ工夫してみたものの、「パシコン用記録メディアを製造している会社」であっても、働く人達のほとんどはフツーにパソコン音痴な人達でしたから、データベースが社内で活用されることはほとんどありませんでした。

マルチメディア革命と言われるのは5年以上後、パソコンが使えない人は生き残れないと言われるIT革命で世間が騒ぐのは10年以上後になるまだまだ黎明期な時代でした。

2007.5追記

 

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