日々の雑感〜酒鬼薔薇聖斗の挑戦〜差別する世間

1997年の神戸連続児童殺傷事件の少年A:酒鬼薔薇聖斗が出所後に手記を出版しましたが、内容の云々以前に殺人のあらましを出版してしまう本人や出版社の神経を疑う...というマスコミ評が飛び交うなか「意義のあること」という声も少なくないのが現代っぽい...

 

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そんなAを日本社会は赦すのかどうかということである。現在、大勢を占めるのは「赦さない」という立場である。死刑制度を肯定するひとが8割が超える日本で、そうした反応は不思議なことではない。社会的包括よりも社会的排除が優先されるのが、現在の日本の態度である。もちろん、そうした態度は極めて感情的なものである。言い換えれば、感情的だからこそ共感され、その一方で熟考されることはない。そして日本独特のあの“空気”が生まれる。

しかし、そこで忘れられていることは、そのような態度によってAを社会的に追い詰めることのリスクである。社会が元犯罪者を受け入れないことによって、犯罪者に逆戻りすることは少なくない。思考停止と同義の生理的な感情が、社会のリスクを高めるという逆説的な悲劇を生んでしまう。

必要なのは、いっときの感情を優先することではなく、本書が日本社会の未来に対してどのような機能を持つのかという理性的な判断である。

「酒鬼薔薇聖斗」の“人間宣言”――元少年A『絶歌』が出版される意義 抜粋

 

しかしながら解説は"お説ごもっとも"の域を超えない。殺人を犯した人間が更正して金持ちになることを許すほど世間は了見が広いとは言い難い。文字通り”一生掛けて悔い改める”のが当然と思っているし、”日陰路地裏人生で当たり前”くらいの認識です。決して”少年であった”ことを情状酌量の余地に加えたりしません。

酒鬼薔薇聖斗がまともなオトナに更正するはずがない

それくらいの差別意識が世間にあるのはフツーだし、それくらいが健全な社会レベルと思えます。"お説ごもっとも"な意識でいられるヒトの軽薄さを疑うくらいで丁度いい。話の刷り変えのように聞こえますが「罪を憎んで人を憎まず」でいられる人間などいません、ただただ我慢と修行僧のような問答に苦しむ被害者の心情に世間が寄り添うにはそれくらいの差別が妥当に思えます。もし"お説ごもっとも"な話を安易に受け入れる社会が到来するとなればそれは決して明るくない未来な気がします

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<追記>

出版本を読んだジャーナリストの論評さえ”ありがちな話”をそれらしく組み立てなおした風にしか読めない。良否を言ってる訳ではない。むしろいい歳を積んだオトナと呼ばれる世代に向けてこのような話をしなければ帰結は伝わらないのだろうか...という気になる。・

「どうして人を殺してはいけないのか?」という問いが世の中に渦巻いていた。その「答え」を彼はこう出した。
「どうしていけないのかは、わかりません。でも絶対に、絶対にしないでください。もしやったら、あなたが想像しているよりもずっと、あなた自身が苦しむことになるのです」(P282)

にもかかわらず、本書が非難を浴びる最大の要因も書かれている。
「自分の過去と対峙し、切り結び、それを書くことが、僕に残された唯一の自己救済であり、たったひとつの『生きる道』でした」(P294)
 
確かに、書くことは自己救済になるのかもしれない。それは本書を書く最大の動機だろう。しかし、なぜ自己解決してしまったのか? 更生というのは、自分で道を切り開くと当時に、他者を適切に頼ることでもある。今、彼に必要なのは「信頼できる相手を見つけ、頼ること」ではないのだろうか?

殺害された小6男児の父親は元少年Aと直接には会っていない。産経新聞のインタビュー(14年11月11日)では、「謝罪して許されるかどうかは問題ではない。誠実に命をかけて謝り続ける行為こそが償いでしょう。それならば、遺族に届く『真摯な言葉』がないことはないだろう」と答えている。そんな中、本書の出版を報道で知った父親は怒りをあらわにする。元少年Aの出版という行動は、自己救済だったが、同時に遺族の怒りをかった。その意味では、まだ自己の快楽に溺れているのかもしれない。
(渋井哲也/ジャーナリスト)

「どうして人を殺してはいけないのか?」元少年Aの結論とは? ―『絶歌』から加害者心理を読む 抜粋

前世紀末から現代の子供世代への不干渉もしくはオトナのご都合優先とも思える保護教育は妙に気味が悪いと感じていて...酒鬼薔薇のような少年時代の異常行動をリンクさせるのは飛躍過ぎるのだけど、酒鬼薔薇のなかに”異常”を探して安心している世間はもっと気味が悪いのである。

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