「つぶやく」だけでいいの? 明治の男に学ぶ中国古典〜オススメのコラム紹介

昨年初頭、NHK大河ドラマ「龍馬伝」が始まって、世間的には「平成の坂本龍馬を捜せ」ブームが起きて、明治維新の気概を懐かしむムードに包まれておりました。ワタクシ的には(十代の頃に読ませて頂いた)司馬遼太郎の坂本龍馬には感心もなく、歴史をひっくり返して日本が突き進む契機になった明治維新というものをありがたがるワケでもなく「あぁ当時の人はホントにホントに大変だったろうなぁ」と想っていました。「当時の人」というのは偉人と言われる人達じゃなくて、大衆、400年間のんびり時代を過ごした一般の人達のコトです。

それでも明治の偉人さんにはずっと関心があって、とりわけ中国古典を持ち込んで独自の解釈をしていった人達はすごくおもしろいです。そんな人達の一端を紹介していたコラムが始まったのが丁度、昨年初頭の明治維新ブームの最中で、先月とりあえず最終回を迎えました。

著者プロフィール

守屋 淳(もりや あつし)

1965年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大手書店勤務を経て、現在は中国古 典、主に『孫子』『論語』『老子』『荘子』『三国志』などの知恵を現代にどのように活かすかをテーマとした執筆や企業での研修・講演を行う。著書に『心をほぐす老子・荘子の教え』(日本実業出版社)、『「論語」に帰ろう』(平凡社)、『「勝ち」より「不敗」をめざしなさい』(講談社)、『孫子・戦略・クラウゼヴィッツ―その活用の方程式』(プレジデント社)ほか多数。訳著に『現代語訳論語と算盤』(ちくま新書)。講演CDに『幕末・明治の英傑に学ぶ』(日経BP社)。『渋沢栄一の「論語講義」』守屋淳編訳 平凡社新書。著者ホームページはこちら

  記事一覧

    2011年6月1日
    感情移入と大局観

    秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈最終回〉 ライバルを知る、敵の出方を知る、という意味で、われわれの参考になる事例が、昨今何かと話題の多い相撲界にあります。

    2011年5月11日
    すべての戦略はインテリジェンスに通ず

    秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈7〉 『孫子』という古典には、一つ奇妙な謎があります。それは全十三篇で成り立っている最後に「用間篇」、つまりスパイの活用法が置かれていることなのです。

    2011年3月30日
    関東大震災後、八面六臂の活躍をした渋沢栄一

    番外編 民間の力とスピードを重視して復興に貢献 1923年9月1日、関東大震災が日本を襲ったその時、栄一は兜町にある渋沢事務所で執務をしていました。このとき、齢83歳。彼のいた事務所は、東京駅の設計などで有名な辰野金吾による設計。

    2011年3月9日
    名指揮官は岡目八目

    秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈6〉 日本海海戦において、なぜ連合艦隊は勝利できたのか。この実戦における胆となった局面について、司馬遼太郎さんは『坂の上の雲』で次のように描写しています。それは連合艦隊とバルチック艦隊が、まさしく激突しよう...

    2011年2月16日
    「優勝劣敗」をいかに実現するか

    秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈5〉 秋山真之は、海軍で同期生だった森山慶三郎(日露戦争では第二艦隊参謀)に対して、学ぶべきお勧めの兵書を手紙で送ったことがあります。その詳細は以下の通りでした。

    2011年1月5日
    「孔明の罠」の呪縛

    秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈4〉  秋山真之に対する有名な形容の一つに、「智謀湧くが如し」という表現があります。まさしく名軍師の颯爽とした姿を彷彿とさせる言葉ですが、では中国史のなかで、これと同じ形容が当てはまる人物は誰かと探してみる...

    2010年11月24日
    西欧の「殺敵主義」と和漢の「屈敵主義」の悩ましい関係

    秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈3〉 秋山真之は、古今東西の軍事戦略書を二つに分類し、次のように整理しました。この分類が、『孫子』の状況認識の特異性にそのまま直結している切り口なので、まずはご紹介したいと思います。

    2010年10月27日
    秀才の考える戦略はなぜ似てしまうのか

    秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈2〉 しかしでは何故、同じ環境からは似通った戦略しか発想されにくく、かつ、お互い真似し合うことが可能になるのでしょう。ここにかかわってくるのが、前回取り上げた、渋沢栄一の、次の言葉なのです。

    2010年9月29日
    勝負師は「応用の才気」で勝負する

    秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈1〉 某ビジネス雑誌では、経営者の愛読書を毎回1冊ずつ取り上げているのですが、面白いことに、ある本だけは掲載をお断りしているそうです。

    2010年8月25日
    ドラッカーが絶賛した渋沢栄一

    渋沢栄一を経てグローバル化した『論語』の旅をたどる〈6〉 非神聖化し非宗教化された「精神主義」》とは何か。それは「論語と算盤」「道徳経済合一説」といったモットーの中で、渋沢栄一が日本の実業界に注入しようとした「論語」や「道徳」に他なりませんでした。

    2010年7月16日
    日本の民主主義には「仁」の精神がなくなってしまった?

    渋沢栄一を経てグローバル化した『論語』の旅をたどる〈5〉 渋沢栄一は、設立にかかわった会社が約470社あり、主な所だけを挙げていっても、次のようになります。抄紙会社(のちの王子製紙)、東京海上保険会社(のちの東京海上火災)、日本郵船、東京電灯会社(のちの東京...

    2010年6月24日
    孔子や孟子が大将となって、日本に攻めてきたら…

    渋沢栄一を経てグローバル化した『論語』の旅をたどる〈4〉 『葉隠』といえば、戦国時代の気風を色濃く残した「武士道」を描いたことで有名ですが、そのなかにこんな記述があります。「若いとき、衆道(男色)で一生恥をかかなければならないようなことを起こすことがある。そ...

    2010年5月20日
    「足るを知る」に騙されていませんか

    渋沢栄一を経てグローバル化した『論語』の旅をたどる〈3〉 最近、老荘思想が若者の間で流行っている、という記事を目にして「草食系もここまで来たのか」とちょっと驚いたことがあります。今までも「足るを知る」といった言葉を下敷にした書籍の広告を、よくマスコミで目にす...

    2010年4月22日
    ペリーも驚いた日本人の華麗さと威厳の背景にあったもの

    渋沢栄一を経てグローバル化した『論語』の旅をたどる〈2〉 たとえば『論語』のなかには、「仁」「勇」「知」「信」「恕」といった「良き行動のためのルール」、つまり徳目が沢山できます。しかし、それを頭でわかっているというだけではまったく意味がありません。自分の身の...

    2010年3月25日
    ドラッカーに影響を与えた『論語』は“お笑いのネタ”?

    渋沢栄一を経てグローバル化した『論語』の旅をたどる〈1〉  現代の英米において、『論語』や孔子は、お笑いのネタにされつつ、尊重もされているという、ちょっと不思議な受け入れられ方をしています。まず英語には、こんな冗句の慣用句があるのはご存知でしょうか。

    2010年2月19日
    “つぶやく”だけで漱石も一葉も読めなくていいの?

    デジタル化できない本物の教養を身に付けよう 筆者はその昔、書店の現場で10年ほど働いていました。そのとき店頭で大学生であろう女性から、こんな問い合わせを受けたことがあります。「樋口一葉の『たけくらべ』の翻訳ってないですか」。「え、樋口一葉は古文...