日々の雑感〜経済格差が学歴格差な世の中〜大学進学無償化制度

2019年5月10日の参院本会議で、低所得者世帯を対象に大学など高等教育を無償化する「大学等における修学の支援に関する法律(大学等修学支援法)」が可決、成立しました。これによって、大学などの高等教育の無償化制度が2020年4月1日からスタートすることになります。

”苦学生”や”自立進学”がなんとか成立していた70年代、望めばほぼ誰でも大学に入れる時代になったのにそれがおとぎ話になって久しい「経済格差が学歴格差な世の中」、今回施行される無償化制度の中身的には問題も限界もありありで批判も多いですが、やっと一筋光が指した感があります。

5年ほど前、昔の同僚の娘さんが医者を目指すにあたって受験したのは「自治医科大学」と「防衛医科大学校」無事両方ともに合格して防衛医科大学校に進学しましたが、どちらを選んでも”入学金・授業料が要らない”という点ではなんとも親孝行な娘さんです。現在でもホントに優秀な人には限られた門戸が開かれてはいるのですが、自由には程遠い「経済格差が学歴格差な世の中」であることに変わりはありません。

授業料高騰の80〜90年代

国公私立大学の授業料等の推移 (PDF:22KB)

少子化が進み、今世紀は誰でも大学に入れる時代になったのですが...
70年代中盤以降、大学の授業料はかさ増しに上がり続け、90年代初頭には国立大年間授業料と一般家庭の平均月収が同額レベル(私立大年間授業料はほぼ2倍)に達し、現在はさらに6割増とはるかに高額なものになっています。04年に国立大学が法人化され受益者負担へと政策転換、国の「運営費交付金」が年々削られ授業料高騰に歯止めが効かなくなった結果だと言われています。

国立大学法人運営費交付金(PDF)

学生が自立進学、苦学生でなんとか卒業出来た60〜70年代

ジブンが大学進学を目指した70年代後半、我が家に経済的な余裕は全くありませんでしたから、私立大学への進学は眼中になく国立大学ならばなんとか学生奨学金とアルバイトで最低限の生活と授業料を捻出できると踏んで懸命でありました。

結局、合格通知の中からジブンが選択したのは 競争倍率20倍と受験前には進学想定していなかった ”入学金無し”、”無料の寮完備”、”授業料は国立大学の八掛け”と願ったり叶ったりな条件が並ぶ”当時の職業訓練大学校。なにより貧乏人がお金の心配しないで済むというのが大きかったのは言うまでもありません。

在りし日の職業訓練大学校 相模原キャンパス 1980年当時

70年代末、国立大学の授業料は年額10万円そこそこ(当時の大卒初任給と同等額レベルだった)当時の世間は日額1万円のアルバイトも珍しくない景気だったので、上京した地方学生がなんとか自活と自立進学を両立させることも出来たのです。(私立大学は当時もある程度以上の経済的バックアップを親から受けなきゃ成立しなかったでしょうが...)ところが、80年代に入りジブンが卒業する頃には新入学生の授業料は4年間で2倍の年額20万円に跳ね上がりました。

誰でも大学に入れる時代なのに

その後、受益者負担の名目の元2007年まで授業料は高騰を続けた国立大は535,800円で高止まり(大卒月額初任給の2倍程度)私立大系は近年再び上昇に向かう気配です。

現在、大学と短大を合わせると志願者数に対する収容率は95%、望めばほぼ誰でも大学に入れる時代になっています。ただ地方から首都圏の大学に進学するのには、国立大学でさえ最低でも年間150〜200万円プラス、4年間で800万円プラス程が必要です。”苦学生”、”自立進学”などほぼほぼおとぎ話な現代で、平均年収450万円の家庭がおいそれ支出出来る額でもなく、後々苦しむ”奨学金〜学生ローン”頼みに大学進学するのも、なにやら馬鹿らしい現代社会です。

「授業料は家でなんとかするから、衣食住は自分でなんとかしなさい」と4年前に送り出した友人宅の息子が今年卒業して就職、話を聞くと「2年くらい就職活動してたし...勉強も遊びも中途半端だった気がする」なるほど「経済格差が学歴格差な世の中」以上に、いまの大学生活にはモラトリアムを享受できる隙間も無いのかもしれないなぁ、と我が時代とのギャップを思い知るのですよ。