竜巻の季節到来〜さいたま市は安全か?〜越谷の竜巻発生状況の検分を追加しました

「お、あれはなんだぁ」とつれあいは勤務先から同僚と遠い空を眺めていたそうですが、埼玉県越谷市で発生した竜巻のことだと知れるのは数分後のことだったらしい。

竜巻、埼玉で停電約3万世帯 千葉や茨城でも

 

 2日午後3時現在、竜巻とみられる突風などの影響で、埼玉、千葉、茨城の3県で計約3万1500軒が停電している。東京電力によると、停電しているの は、埼玉県春日部市の2万2400軒▽同県越谷市で約4100軒▽さいたま市見沼区で約800軒▽同県松伏町で約200軒▽千葉県野田市で約3800軒▽ 茨城県坂東市で約200軒。

朝日新聞デジタル

全国ネットに載るニュースになったため地理関係に疎い遠方の知人から数本の電話が入るなどしましたが、もちろんさいたま市大宮近辺には影響はありませんでした。ただ春日部、越谷、野田はよく出掛けるお隣さんと言ってもいい地域、状況は他人事ではありません。

※今回の竜巻の発生地点がさいたまスタジアム近傍(さいたま市緑区)であることが判明しています。

ただ埼玉、千葉、茨城県境というのは気象が不安定になる地域というのがもはや常識、上空寒気と地上近傍の気温差が大きいという要素と、風がぶつかり合う地域的な要素が組み合わさりやすくて、もともと竜巻が起こりやすい地域。また激しい集中豪雨に見舞われたり、春先の半端ない暴風も起きやすい地域でもあります。

気象庁の「竜巻に関する統計資料」を眺めても、近年になって”竜巻が増加”しているとは言えない(解らない)ながらも、どうやら9月は竜巻の季節にあたるらしい。

竜巻発生の解説が「寒冷前線が通過するとき、冷たい空気が暖かい空気の上に乗る形になった場合に激しい対流現象が起きて積乱雲が発生し、このとき暖かい空気が急激な上昇運動を起こし回転運動を始める事象が竜巻」というように夏日の変わり目でしばしば天気予報に登場する寒冷前線、寒気団がトリガーになりやすいとは言えるようです。

日本全国の竜巻発生地域を見ると海岸線沿岸が多いのですが、関東平野に限ってはそれはあてはまっていません。

関東近辺がちょうど季節の変わり目、寒気・暖気の境界にあたる機会が多いのと、なにより”大きな平野”であることがその理由です。前述の竜巻発生メカニズムで「急激な上昇運動を起こし回転運動を始める」には大きな障害物は邪魔ものですが、関東平野には大きな山もなくおまけに地表がヒーター化するので、もともと竜巻が発生しやすい条件を持った土地だと言えます。

加えて今回は台風の影響もあって(関東の南側沿岸にも障害物は無いので、今年異常に熱せられた暖気が弱められることなく)真南から熱い暖気が吹き込みました。これも今回、大きな竜巻を生んだ要因と言われています。


2013.9.2 発生した竜巻の足跡(防災技術研究所 資料抜粋

防災科研のXバンドMPレーダーで観測された降雨強度 (mm/h) と
高度1 kmにおける風向・風速の時間変化

防災科研のXバンドMPレーダーで観測されたレーダー反射因子の三次元分布
(積乱雲の発達過程)

竜巻発生の大きな要因になる積乱雲の発達過程を見ると、さいたま市上空で既に10km超に発達していたことが解ります。今回さいたま市街(大宮、浦和棟)で竜巻が発生しなかったのは新都心に代表されるようなビル群のおかげだったやもしれません。

今後、異常気象とは言えない状況が恒常化もしくは進めば、さいたま市街で竜巻が発生しないとは言い切れない状況ではないでしょうか。