もはや”盗撮行為”を防ぐ手段はないのだな〜Other Days, Other Eyes「去りにし日々、今ひとたびの幻」ボブ・ショウ

女性のスカートの中を盗撮したいヒトというのは社会的な肩書きに寄らない、というのは報道を眺めていれば証明され続けているワケで、大学教授だろうが警視庁だろうが政治家だろうが世間の信頼を裏切る輩は後を絶ちません。
IT業界超速の進化の末にカメラのレンズは米粒ほど、電池と送信機、保存媒体を含めてさえ本体は消しゴム大に収まるのだから、もはや”盗撮行為”を防ぐ手段はないにも等しいです。(捕まる輩はよほど賢くないか、スリルに酔ってやってるとしか思えない)

 

これらの"盗撮用"カメラ機材は「防犯」目的と謳って堂々と売られていたりするので始末が悪いというか呆れてしまいますが、連日盗撮逮捕者が出ながらも法律上はなんの縛りも掛けられない〜見て見ぬ振り〜の状況でした。ところが先日京都府警が全国ではじめて「府迷惑行為防止条例違反(盗撮)ほう助」として”靴型カメラ”を販売していた業者を逮捕しました。しかしながらこれも「盗撮に使われると知っていて売った」と容疑を認めさせることができた(どんな厳しい取り調べがおこなわれたかは解りませんが)から立件できたに過ぎません。

 

携帯電話にカメラが標準搭載された時点でこの世は相互監視時代に突入したワケで、更に誰もがカンタンに消しゴム大のカメラを使ってリモート撮影できる世の中で、死角(プライバシー)を確保することはますます難しくなりました。

そんな世間の状況から思い出すのが冒頭画像にあるボブ・ショウ Other Days, Other Eyes「去りにし日々、今ひとたびの幻」(1981 サンリオSF文庫)です。

”通過する光の速度を減速させるガラス”〜スローガラスが偶然発明されて、窓を通してスローモーションな過去の景色を眺めることが出来るようになり、世間では潤いある癒やしのアイテムとして利用されるのですが、政府はイイ事を思いつきます。このガラスの破片を至るトコロにばらまいておけば、事件が起こった後からガラスを通して事件を追認できる〜防犯に利用できる....世間からプライバシーが消える....

まさに現代の状況に酷似した様を予言するSF小説でした。

十代後半の一時期は海外SF小説にはまってしまい”海外SFシネマのクオリティーが高いのは、背景にある裾野の違い”と納得していた時期があります。ボブ・ショウ作品を読み漁ったのもこの時期です。そして惜しむらくは「The Palace Of Eternity〜永遠の宮殿 1965」「Orbitsville 〜オービッツヴィル 1975」等のボブ・ショウ代表作品の翻訳文庫が出版されずにサンリオSF文庫が無くなってしまったことであり、未だに出版されていないことです。