10年越のカングー考察〜シートから回り込むように曲がるステアフィールが好き

10年目の我が家のカングーを考察する第3回

昔、カングーをドライブした日本人の評論家がそのステフィールを「ポルシェ以来の感激」と評したコラムもあって「まさか」とか苦笑いしていましたが、ジブンもカングーの少し重めでレスポンスが丸めながらも安心感の大きいステアフィールが大好きです

 

絶妙なトレースレスポンスと安定感

どちらかと言えば粘着質で鈍いタイプと思えるハンドリングに背高重心高めなカングーはロールの絶対量も大きいし「キビキビした走り」というような軽快感はありませんが、極端に速い切り返しでもしない限り悪路でも破綻しにくい安定性は、舗装路のコーナリング中もスポーティーなクルマのそれに近いです。

カングーの少し重めでレスポンスが丸めなステアリングは、切った分だけきっちりタイヤが動いていくのが解ります。「ステアリングを握りこぶし半分じわっと寄せてセンターラインをトレース」なんて感覚がカングーではフツーに出来たりするし、多少の外乱が加わっても修正舵を入れる回数は国産車一般より断然少ないです

「慣れたクルマであればそんなコトはどのクルマでもできる」と思いがちですが、並の国産車のそれは”当て感”みたいなモンで結果は同じでも、過程をじんわり感じられるクルマというのは稀です。そもそもステアリング中立位置でタイヤの向きや接地感を感覚的に見失い易いクルマは山ほどあって、修正舵の必要有無を意識する以前に”慣れ”が無意識のうちにそれを探す動作を繰り返していたりします。そして接地感が薄いクルマだとコーナリング中も慣れだけの”当て感”では正確なトレースが難しい場面も多くなり修正舵が増え、不安になったりします。たぶんそんな”慣れ”のなかに潜む無意識な反応や不安も蓄積すると疲労につながるんだ、と気づかされたのはカングーに乗ってからです。

唐突さが無い自然なコーナリング

ターンインで鼻先がヒョコと向いて引っ張られる(FF)/押し出される(FR)ように曲がっていく並の国産車や、ワンボックスの後ろを振り回すような感覚とも違い、カングーのコーナリングはターンインでも唐突さが無くシートからそのまま回り込むように曲がっていく感覚、実に自然に感じられてクルマとの一体感もヒトシオです。

想定以上の速度でコーナーに飛び込んでしまいプッシュアンダーで「曲がらない」なんてコトが昔のクルマではよくありました(現行国産車でも先日経験しました)が、カングーではグラッとロールしながらステアリングを切った分だけグイっと回ってくれるから不思議です。

若い頃はクルマが曲がる理屈をいろいろ調べて”革新的操舵技術”を搭載した新車が登場するたびフムフム感心したりワクワク見入ったりする小僧だったのですが、平凡な足回りの商用車であるカングーがこれだけ”楽しい”走りをするのは正に目からウロコを落とす想いだったりします。

 

感心する直進安定性と接地レスポンス

150km/hの高速巡航でも直進安定性、接地感がしっかりしているカングーに感心します。下りの大きな高速コーナーでも安心してアクセルを踏めるのもコーナリング性能云々ではなく、実のところ直進安定性、分かり易い接地感がベースの安心感があるからです。

日産エルグランドで東海道を往復した際も楽チンではあったものの、なにやらステアリングに信頼が置けない感覚が常にあって、真夜中の新東名で昔々に乗っていた日産テラノ3Lを思い出していました。変わらないなぁ....と。

 

ベスト・ハンドリングに近いカングー

つらつら感想を書いてはみましたが、クルマ好きなヒトが語るような「スパッと切れるハンドリング」ではないですし「キビキビした走り」とも違う気がします。ただジブンには初めて出会った無味にもっとも近い「愚直に真面目な優しいハンドリング」に思えました。

10年18万キロもつき合えているのは40代後半での出会いというコトもあるでしょう。若い頃だったらもっとやんちゃなクルマを選んでいただろうコトは容易に察しがつきます。

そしてもうすぐ還暦なジブンのドライブには、カングーは優しくベスト・ハンドリングなクルマに映ります。

 

追記:おまけ
こちらのクルマは”接地荷重を最適化してスムーズで効率的な車両挙動を実現する世界初の革新的制御技術”を搭載したそうな、ビデオで評論家が喋っていたコトがあまりにジブンの2007カングー評に似ていたので追加掲載です。

【Dynamics】G-ベクタリング コントロール モータージャーナリスト清水和夫さん 試乗動画